忍者ブログ
日記兼二次小説スペースです。 あと、時々読んだ本や歌の感想などなど。 初めての方は、カテゴリーの”初めての人へ”をお読みください。
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
カウンター
プロフィール
HN:
yui
性別:
非公開
自己紹介:
典型的なB型人間。
会社では何故かA型と言われますが、私生活では完全なB型と言われます。
熱中すると語りたくなってしょうがない。
関西在住、性格も大阪人より。
TVに突っ込みを入れるのは止めたい今日この頃。
趣味は邦楽を愛する。お気に入り喫茶店開拓
一人が好きな割りに、時折凄く寂しがりやです。
字書き歴7年近く。
インテリ好きですが、私は馬鹿です。
コメント、トラバはご自由にどうぞ。

メールアドレス
yui_control☆yahoo.co.jp
☆→@
最新CM
[01/02 yui]
[05/15 団子]
[03/21 タチカワ]
[02/09 NONAME]
[01/11 yui]
最新TB
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
29
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

着々と進む蔵馬とぼたんです。
書いていて楽しいなぁ。
ただし今回絡んでいるのは、コエンマとぼたんです。
時間軸は、前々回の話より、ずっと前の話になります。
しばらく蔵馬の片想い開始までを、うろちょろする感じです。
なので視点は、殆ど蔵馬かぼたん以外の誰かって言うのが、多くなりそう。
お題で書くお話は、全て繋がっているように作っていく・・・・つもりとか予定。
お題が余ったら別だけど。




















一体いつから繋がっていたんだろう。初めて出会ったときか。それとも普段の何気ない瞬間だったのかもしれない。今となっては、その瞬間を覚えてはいない。どれが決定的な何かだったのかはわからない。思い出そうとしても、それは曖昧で、言葉にしようとすればするほど、ぼやけて霞がかってわからなくなる。
本当にいつの間にか、俺はその糸を繋いでいた。繋がっていたことにさえ、あの時まで、俺は知りもしなかった。





19 抱き合う



ぼたんを探して歩いていたというのに、気配を断って近寄った。ホテルの廊下。曲がった直ぐ先から聞こえてくる。気付かれないようにと想ったのは、その声が涙が混じっていたからだ。そして、もう一人、人の気配を感じたから。

「まったく・・・お前がそんなことでは、幻海が浮かばれんだろう。」

「だって・・・っひっく・・だぁってぇえ・・・・。
 コエンマ様・・・、師範がぁ・・・ぁんな・・・。」

その言葉に、俺は全てを察した。昨日消えた幻海師範の霊気は、やはりそういうことだったのだろう。
それ程親しい付き合いをしてきたわけではない。面識は幽助の師匠であるということだけだったし、覆面としては会話らしい会話もしていない。それでも幽助や桑原君、ぼたんが慕う様子を見てきたし、幽助がどれほど口で悪くは言っていても、師範を信頼し心のどこかで頼っていたのは、見ていれば直ぐにわかった。幽助も桑原君もこの世界に身を投じて、それ程長くはない。足りない知識と経験を、彼女が埋めてくれていた。
何より、霊光波動拳の幻海の名を知らない妖怪は、居ないといっていい。おそらく今大会の中で見せた技など、彼女の多くあるものの中のほんの一端に過ぎない。人間でありながら、それ程の力を手に入れた彼女に対して尊敬の念がある。どれほどの修行を積んできたのか。飛影でさえ、彼女のことは認めていただろう。
幻海師範を失ったことは、チームの損失としても、とても大きいのだ。

「いい加減泣きやまんか。
 まったく、お前のことだ。
 どうせ幻海の前でもピーピー泣いたのだろう。」

「だって・・・師範が・・・。」

その姿が容易に想い浮かぶ。知った相手の魂を運ぶのだ。それ程辛い仕事はないだろう。霊界に行き、そしてその後、天国か地獄かへの選択が迫られる。そして、忘却の河を渡って、輪廻転生に加わり、新しい命としてこの世界に戻ってくる。まったく別の者になるのだ。
別れを苦しまないわけがない。情に厚いぼたんなら、きっと師範に取りすがって泣いただろう。

「そんなお前に、幻海はどう言った。
 辛い苦しいとでも言ったのか?」

「・・・みっとも無いから・・・泣くなって。
 もうずっと前から・・・解ってたから、これで・・・・いいって怒って。
 でも!!!でもこんな!!!」

壁を背に、二人の様子を伺うと、納得できず言い縋るぼたんが、ますます嗚咽を高くしていく。幻海師範の嗜める声が、俺の耳にも聞こえてきそうだった。さっぱりとした気性であり、長い人生をこの世界で生きてきた人だ。どんな最期だったにせよ、納得して逝ったのだろう。少なくともそれを泣かれて、喜ぶ人ではない。
だがぼたんも、それをすぐに納得できる人ではない。

昔は、俺も飛影も敵だった。少しでも関係が違えば、幽助と闘っていただろう。今回の武術大会で、敵として相対していた可能性はけして低くはないのだ。なのに今では、すっかり俺達を仲間だと信頼してくれている。狡猾な俺はまだしも、普段悪ぶっている飛影のことでさえ。
怪我をすれば自分のことのように悲しむし、時には自分の身を省みないことさえある。よくも悪くも酷く人間に近い。彼女は、別れ、死と言うものを、人のように恐れるのだ。死を恐れる死神。それは俺に少し近しいかもしれない。妖怪でありながら、人のように人を愛する俺と。

「まったく、不出来な部下を持つと、苦労をするよ。」

その時、目の前が、一瞬真っ白になった。自分の目が何を見ているのかが、上手く認識できない。何故出来ないのかさえ、理解できなかった。

「コエンマ様・・・・。」

「とっとと泣ききってしまえ。
 そんな顔では、みんなの前に行けんだろうが。」

ぼたんの手が、コエンマの背中に回り、ぎゅっとしがみつく。コエンマの手は、ぽんぽんと優しくぼたんの背を撫でていた。まるで幼子をあやすような仕草だ。
コエンマに特別な想いは、感じなかった。本当にただ慰めているというだけの仕草だ。あるとすれば、言葉通りの諦めがあるくらいだろう。困った部下に対してのそれは、とてもコエンマらしく良き上司の姿だ。霊界案内人として、死を受け入れられないぼたんを嗜め、認めることはない。だが、それでも手を差し伸べる。厳しさと寛容を持ち合わせているのは、人の上に立つ者としての大きな資質でもある。普段はふざけておどけた姿も見せるコエンマだが、仕事に関しては、有能で頭の切れる統治者だ。ぼたんにとっては、信頼に足る上司だろう。まして事情も知っているのだ。頼るのはおかしくない。

おかしいのは、俺の思考だ。

これではまるで言い訳を考えているようだ。そして言い訳と同時に、俺は自分の中に強い虚無感が湧き上がっていくのを感じた。繋がっていたものが、何かの拍子にぷっつりと切れてしまったような頼りなさ。繋がっていたのは、落ちた糸は一体なんという名だったのか。俺は初めて、その糸に気付いたのだ。



不意に笑いたくなった。
愚かすぎる自分を、おもいっきり笑ってやりたくなった。
強く唇を噛んで、それを堪える。



それからどれぐらい、そうしていただろう。長いのか短いのか解らない。漸く落ち着いたのか、少しぼたんの嗚咽がおさまってきた頃だった。

「酷い顔じゃな。
 とりあえずわしの部屋に行くぞ。
 顔ぐらい洗わせてやる。」

「はい。」

そうして、コエンマはぼたんの肩をソッと促した。それに頼るようにぼたんが、少しずつ歩き出す。廊下の端に消えた二人を見送ってから、俺はゆっくりと気配を解放した。
コエンマはぼたんを慰めていただけだ。悲しみに暮れる部下を気遣うのは、別段おかしいことではない。そんなことは解っている。解っているのだ。頭の中では理解しているのに、思考の奥がジリジリと焼けていく。苛立ちが高まって指先が震えた。

「はっ・・・ははははぁ・・・。」

やっと零れた笑いは、我ながら、酷く自嘲めいた笑いだと思った。左手で顔を覆う。何から目をそらそうとしているのかは、自分でも解らなかった。解りたくも無い。知ることは、少し恐い。自分の中の価値観が、一気に壊れてしまう。そんな可能性さえ孕んだそれは、今知るには重すぎる。

仲間だからだ。だから大切にしている。傍に居ることも多い。信頼もされているだろう。そう想っていた。だから、だからきっと他の誰かを頼られたことに嫉妬している。それだけだ。ただの子供のような所有欲にも似た幼稚な感情だ。勝手な思い込みだ。
それでいい。それ以上知ろうとすることは、大きな変化の嵐に自ら身を投げ出すことだ。

右手がいつの間にか握りこぶしを作っていた。熱く痛む手が唯一の正気。
変り始めているそれは、今はまだ予感のままで。


END

拍手

PR
お名前
タイトル
文字色
URL
コメント
パスワード
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
あとがき
抱き合っていたのは、コエンマとぼたんと言う、カプを疑う話でした。もちろんコエンマは、大人バージョンの姿ですぜ。アニメ版では、ちょくちょく子供モードの恰好もしていましたが。・・・・まぁほら、さすがにあの恰好では、決まらないので。
補足入れようと想ったんだけど、さすがにいちいち大人だ子供だって書くとせっかくしんみりな話の空気ってもんが壊れちまうので。私大人コエンマはかなりストレートに好みのタイプです。駄目だ、統治者とかそういうキャラには私は刺激が強すぎる。出来ればもっとかっこよく書きたいなぁ。
そうそう、廊下で人が通らなかったのは、回りが空気を読んだんです。・・・たぶん。
実はこの後の話が、まだあります。なのでちょい続く感じですね。
蔵馬さん自覚一歩手前は楽しいです。
yuiさん / 2008/04/12(Sat) /
Trackback URL
Copyright c JOKER JOE All Rights Reserved
Powered by ニンジャブログ  Designed by ピンキー・ローン・ピッグ
忍者ブログ / [PR]