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日記兼二次小説スペースです。 あと、時々読んだ本や歌の感想などなど。 初めての方は、カテゴリーの”初めての人へ”をお読みください。
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一人が好きな割りに、時折凄く寂しがりやです。
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えっと、今週から1週間瞳のカトブレパス祭とでもいうか、時生×ミーコ祭というか。
一日1個小説アップしていこうと思います。
やっとこさラスト1っこまでかけたので。
まぁ結構ネウロに比べると短めかもしれませんが。
この君に贈る7つの哲学はずっと前から使いたかった御題の一つでもあったし、とても書いててとても楽しかったです。

あぁ、ついでに書くと、毎回捏造って言うほど、甘いですので。
その覚悟だけは、どうかお願いします。
では、ではあとがきは、コメントにて。























1 本当に大切なものは何ですか

僕が、立ち上がろうとするより、彼女が駆け出す方が早かった。障子に手をかけて、伏せた顔に、こちらが戸惑う。ミーコさんと名を呼ぶと、頭振ってこちらを睨んだ。その表情には、僕の方が何もいえなくなった。ぎゅっと結ばれた唇が痛そうで、それだけで彼女の必死さが伝わってくる。
なのに紅い涙は、止まることは無い。

「ミーコ殿?
 いかがなされた?」

「いやや。
 開けたらへん。」

障子の外で、ハクタクが、珍しくオロオロとした声でミーコさんを呼ぶ。それでもダメだとばかり続ける。何故か僕は、それをぼんやりと眺めていた。咎める言葉も出てこない。
紅い涙が止まらなかった。近くに妖魔がいる。間違いない。撃たなければ、このK都の人間に害が及ぶ。それを止めるが使命。だから行かないと。なのに、彼女が通せんぼをして、行かせまいと駄々を捏ねる。彼女以外に、こんなことをされたら、僕はどうしただろうとふと考えた。いや、彼女を深く知る前ならどうしただろう。構うことなく邪魔だと言って、この部屋を出て行くに違いない。どうでもいい、そんな物と同じように突き飛ばすぐらいは、していたかもしれない。嫌われることなんて、きっと構うことなく。あの頃なら。

「行ったらあかん。
 行ったら、志村無茶ばっかりして、怪我して帰ってくるし。
 そんなん・・・見たあらへん。」

「ミーコさん。」

「いやや。
 絶対行かしたらへん。」

近づくとミーコさんが、怯えたように悲しげな声で、言い募る。批難に似ているそれは、今まで触れたどんなものよりも暖かかった。絶対という言葉が強く言い切られて、ミーコさんの気持ちの強さがよく解る。それが嬉しいと思ってしまうのは、不謹慎かもしれない。
昔に無くした暖かい気持ちが、今、胸の内でゆっくりと湧き上がっていく。無条件に誰かに大事にされる。志村家当主ではなく、ただの志村時生を大事に思ってくれる彼女の気持ちが嬉しくて、僕にとって、彼女がどれほどかけがえないものか。改めて胸の内で繰り返す。だからこそ、彼女の駄々一つきいてあげることが出来ない。胸苦しいのは、申し訳なさか。それともそんな彼女が愛おしくてか。
彼女を腕の中に囲う。強張っていた肩の力がゆっくりと抜けていくのが解った。いつも溌剌としたミーコさんだから、余り意識したことが無かったけれど。薄い肩をしていた。それを心に強く強く残す。

「ごめんなさい。
 僕は、行きます。」

「あかん。
 怪我するし、うち志村が怪我するのいやや。」

胸元で、彼女が髪が揺れる。それに手で触れて撫でる。何度も何度も手に覚えさせる。忘れない。
強くありたいと思う。そのために。大事なのは、何の為に。

「ミーコさん。
 初めてあった日のことを覚えていますか。」

「忘れたことあらへんよ。」

「ありがとうございます。」

「お礼言われることちゃうやん。」

言うべきことなのだと、伝えるべきだろうかと少し迷った。自分があの日のことをどれほど大事に想っているのか。とても感謝しているのだということを、彼女は知らない。今も誰かが襲われているかもしれないというのに、そんなことを考えて、暢気だといわれるかもしれない。一燈さんに知られれば、きっと烈火のごとく怒られるに違いない。でも、忘れてはいけない。いつだって。僕は、今、何が大事なのか。

「僕は、この手で倒さなくてはならない奴がいると言いました。
 あの頃の僕は、兄を倒すために、妖魔退治をしていました。
 知ってますよね。」

「うん。」

「アレは嘘ではありません。
 そのつもりでしたし、今もその気持ちは有ります。
 でも、今は違います。」

「よう、わからへんねんけど。」

きょとりとした目で見上げてくる。幼けなくて、無防備な人。大事な人。とてもとても大事な人。守らせて欲しい。僕に。

「今は、守りたいから。
 このK都の人をただ守りたくて。」

「志村?」

知らずと腕に力が篭る。守りたくなる。そんなものがある。あの頃、失くして、もう二度と手に入らないと諦めていたものを僕は手にした。
僕の身を案じてくれる人が。僕のために泣いてくれる人が。
共に笑ってくれる人が。この身の醜ささえ許してくれる人が。
ただ、お帰りと迎えてくれる愛しい人が、いまここにいる。
守りたい。そう思うことに訳なんていらないはずです。

「貴方が大事で、大切で掛け替えの無いものなんです。
 だから、守りたいんです。
 そんな簡単なことを、僕はもうずっと忘れていた。
 貴方に会うまで、触れようともしなかった。」

あの日、出会っていなければ。あの日、ミーコさんが僕の家まで着いてこなければ。
逃げようとばかりする僕の手を、掴んでくれていた。もう二度と手に入らないものだと、諦めて忘れていたのに。

「でも、もう思い出したから。
 きっと、ここに住まう人にも、そんな人がいて、傷つけば誰かが悲しむ。
 もうあんな想いしたくない。
 誰にもさせたくは無いんです。」

ポトリと彼女の頬に、紅い滴が落ちた。それを指で拭ったけれど、拭いきれなかったものが残ってしまった。汚してしまうかもしれない。傷付けてしまうかもしれない。それを悔いるかもしれない。嫌われることも厭わずに、突き放すことが優しさになるかもしれないのに。でも、どうして手放すことができるだろう。
ゆっくりと障子から彼女の手を放す。力の抜けた手は抵抗もせずに、僕にされるがまま戒めを外した。外にいるはずのハクタクは、静かに待っている。早く行かないといけない。解っている。それでももう一度だけ、ミーコさんを強く抱きしめた。小さな肩、細い髪、僕の服を握りこんでくる小さな指先。全てを心に刻む。忘れない。何の為に、僕は闘うのか。

兄を討つ為に。
志村家当主の使命を果たす為に。
妖魔に苦しむ人を助ける為に。

何より、僕の大事な人を守る為に。

腕を放して、障子を開けると、ハクタクが寄ってくる。ここにいるように命ずると、全てを解したようで、微かに頭を下げくれた。障子からミーコさんがこちらに振り返った。視線が合う。零れそうな涙をぐっと堪えている。

「行ってらっしゃい。」

「はい。
 行ってきます。」

その言葉が聴けてほっとした。もうそれだけで、僕は駆け出した。何の為に闘うのか。
それは、今胸の内にある暖かさを失くさない為に。

END

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あとがき
初、瞳小説です。
実は、ネウロとちょっと改行を変えてみたり、自分なりに文章もちょこっと心持ち変えてみたり。
何より、時生の一人称の僕に激しい違和感を覚えてみたり。(笑)
今まで僕って一人称は使ったことが無かったので、妙に照れるのですが、コレはどうしたものかと。
あと、書きもって、ミーコちゃん視点のお話書くときに口調をどうしたものかとか。
自身が関西人なだけに、本誌のミーコちゃんの関西弁に違和感があったので、結構苦慮してます。
なるべく自然に見えるように変えてみようと、試行錯誤してますが。
お話の内容的には、このネタが私は二人のお話で一番に思い浮かびました。
あの時生の無茶な闘い方に、ミーコちゃんも辛いと思うのではないかなぁ~とか。
そんな時生にとって、ミーコちゃんが帰りたい場所になってくれればいいなぁとかイロイロ願望込めました。
結果空気は蜜でも蒔いたかのような甘さです。
でも楽しく書けたので、それで良し・・・と言うことにしてください。
yuiさん / 2007/09/19(Wed) /
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