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日記兼二次小説スペースです。 あと、時々読んだ本や歌の感想などなど。 初めての方は、カテゴリーの”初めての人へ”をお読みください。
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典型的なB型人間。
会社では何故かA型と言われますが、私生活では完全なB型と言われます。
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関西在住、性格も大阪人より。
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趣味は邦楽を愛する。お気に入り喫茶店開拓
一人が好きな割りに、時折凄く寂しがりやです。
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蔵馬ぼたんです。
今回は、この間アップした四聖獣よりは、ずっと時間がすすみます。
また暗黒武術会に戻ってきました。
前までは決勝前。
今回は、準決勝の前です。
これでやっと決勝前の蔵馬の気持ちとかが繋がるかなぁ~と。
順番バラバラですみません。
一応書いた順番にアップしているので・・・・。
計画性の無さが伺えます。
































光の後にあるものを、俺もまだ知らない。



13 手を伸ばす




「彼女は、俺の連れなんだが。
 用があるなら、俺が聞こうか。」

試合会場を出て直ぐ、その色を見つけた。視界の端に、チラっと掠った空色の髪は、よく知った色。でもそれだけではない。彼女にはまったくそぐわない奴らが二匹と一緒に居た。

「蔵馬!!!」

「てめぇ・・・浦飯チームの蔵馬!!!」

ぼたんがパッと明るい声を上げ、妖怪二人はこちらに振り返った。自己紹介は不要らしい。妖怪二匹は、図体と態度ばかりはでかいけれど、それ程の妖気も感じない。どう見ても、俺達の試合で野次の一つも飛ばしていそうな、いうなれば小物と言うやつだろう。

「けっ・・・この間は、凍矢にボコボコにされてやがった癖に。」

「まだ傷も治ってねぇようじゃねぇか。」

下卑た笑いを、無反応で返す。桑原君辺りなら、激昂していそうだなんて考えて、そんな姿を想像して、心の中で笑ってしまった。だが、そんな俺の反応が気に入らなかったのか、一匹が俺に近寄ってくる。見え隠れする凶悪な感情。引き際も知らないらしい。

「今ココで、明日出れねぇようにしてやるぜ!!」

振りあがった時点で、拳の軌道が見えた。少しだけ体をずらして、その軌道を避ける。数回繰り返せば、相手の力もわかる。どうやら俺の見解で間違いは無かったらしい。

「オラオラどうしたぁ。
 かかって来いよ、人間くせぇチンケな狐がよぉ!!」

袖口から一粒の種を取り出し、指先で弾く。勢い良く飛び出したそれは、大きく開けていた妖怪の口に飛び込んでいく。

「お前達相手に妖力を使うまでも無いが。
 もう少し・・・試してみるか。」

「ゲッぇっ・・・ぐぅおっ・・・なっ?
 てめぇ、何しやがったぁ!!!」

「お前が今飲み込んだのは、シマネキ草の種だ。
 どうなるかは・・・俺達の1回戦を見ていれば、解るはずだ。」

解りやすい反応だった。びくりと震えだした身体が、強張って動きを止めた。おそらく今この男の脳内では、一回戦で俺が戦った呂屠の死に様が思い浮かんでいるはずだ。

「俺の声に反応する。
 あぁなりたくなければ・・・・。」

戦慄く口が呻き声を上げて、その震える瞳孔に殺気を叩き込む。

「去れ。」

脱兎の如くとは、正にああいう奴らのことを言うのだろ。次の瞬間には、悲鳴を上げてどこかへ行ってしまった。
奴に飲ませたのは、ただの薔薇の種だ。大体本当に、シマエキ草を植えれば、しばらくすると体に根が張って動くことも出来ないのだ。そればかりは、逃げてどうなるものでもないのだが、そんなことを考えるだけの余裕も無かったのだろう。

「ひゃぁ~さすが蔵馬。
 助かったよぉ。」

振り返ると、いつものように調子の良い声がした。思わずこちらも毒気が抜けてしまう。煽てるような口調は、助けてもらって安心したからと言うよりも、俺が言わんとすることを既に察しているからかもしれない。

「余り一人歩きはしないほうがいいですよ。
 俺が通りがかったから、よかったものを、何をしていたんですか?
 一人で、こんなところで。」

「いや、明日の対戦相手が気になってさ。
 対戦相手だけなら、私一人が確認して報告しようかと思って来たんだよ。」

そういって、軽く笑う。相変わらず無防備極まりない人だと思った。いや、きっと危険をわかっていないわけでもないのだろう。でなければ、他の人間をホテルに置いて自分ひとりで、何て考えるわけがない。
でもやっていることは、危なっかしいこと、この上ない。
この首縊島は、今妖怪の巣窟であり、力が秩序という法は、会場の外でも同じだ。自分達以外に他の誰かの助けなんて期待できない。そんなところで、身を守る術も無くココに居るのは、余りにも危険すぎる。もちろん帰ったほうが良いといったところで、それに頷くような人たちではないのは、解っている。できると言えば、注意をすることぐらいだろう。聞くかどうかはいざ知らず。

「俺が帰るまで、ホテルに居てくれれば、それぐらい教えに行きますよ。
 普通の人間でも危ないんです。
 人間より霊的純度の高い貴方は、妖怪達にとって狙われやすいんですから。
 ちゃんと用心してください。」

「ごめんって。
 それはそうとさ、身体はもう良いのかい?」

あからさまな話題変換だった。きっと反省なんてしてないだろうに。でも人好きのする笑顔でされると、騙されてあげたくなる。とりあえずは。
二人で自然と出口へとゆっくりと歩き出す。すでに先のほうに外の光が見える。

「昨日に比べればマシですね。
 シマネキ草も枯れましたし、貴方に治療してもらってから傷も大分塞がりました。」

「そりゃよかった。
 明日はもう、準決勝。
 それに勝ったら・・・・決勝か。」

「えぇ。」

会場を出れば、空は少し曇っていた。暗雲はあと数時間もすれば、雨を落とすだろう。ますます憂鬱な気分だ。
明日勝てば、決勝の相手は、おそらくあの戸愚呂チームとになるだろう。戸愚呂チームの準決勝の相手の試合も今日見たが、レベルが違った。それは一朝一夕で埋められる差ではない。だが、それは俺達とどれほどの差があるかと考えれば、先行きはけして楽観できるない。思わず繋ぐ言葉を見失う。

「そう言えばさ。
 あんた、もし優勝したら、何がほしいんだい?」

「えっ?」

「だって、この大会の優勝チームのメンバーは、一人一人にそれぞれ褒美がもらえるって。
 何にするんだい。」

「そうですねぇ。」

唐突なぼたんの質問は、言われるまで余り考えていなかったことだった。欲しい物。この闘いの対価。
3回戦、凍矢と闘ったときのことを思い出す。彼らの目的は、光だと言っていた。闇の中で生きてきた彼らにとって、それは焦がれるものだったのだろう。けして楽ではないだろう闘いに身を投じることが出来るほど。
なら俺は、何の為に闘っているのだろう。俺こそ、その問いに対する答えを持っていただろうか。
昔の俺なら、きっと魔界へ帰ることを望んだだろう。母さんを慕う前の俺なら。もし母さんの病が治っていなかったら、治すことを望んだだろう。

「なんかあるだろう。」

「と言われてもね。」

期待に満ちた目がこちらを見上げてくる。苦笑いが零れて、視線から逃げるように空を仰いだ。
元々何か望みがあって、この大会に臨んだわけじゃなかった。招待を受けた時点で、拒否と敗北が死を意味していたから来ただけだった。それに、欲しい物と言われて直ぐに思い浮かぶほど、物欲があるわけでもなかった。それでも、この苦しい戦いの対価に、ただの形ある物が欲しいとは思えない。そんなものを闘いの目的だとは、苦し紛れでも言いたくない。
妖狐だった頃は、欲しい物は幾らでもあった。名を上げて国を興そうと、盗賊稼業もしていた。金銀や宝、暗号の先にあった武具なんていうものを追い求めた頃もあった。でも今はそんなものに、さして執着も無い。今思えば、なんであれほど追い求めたのかも、解らないぐらいだ。

「やっぱり思い浮かびませんね。
 何より、優勝できるって決まっている訳じゃないんですから。」

出来るかどうかわからない、そんな時のことを考えられる程の余裕も無かった。次の試合に勝つことを考えるだけで精一杯だ。
でも、その一言は、失言だった。突然、両頬に目が覚めるような痛みが走った。

「馬鹿言うんじゃないよ!!
 優勝するんだよ、あんた達は!!!」

痛みと同時に来たのは、驚きだった。ぼたんが怒っていた。俺より少し低い位置で、今まで見たことも無いぐらいに、眉間に皺を寄せて、俺を睨んでいる。

「絶対、優勝するの!!!
 いいかい!!!」

両頬を、ぼたんの手が挟んでいる。痛みは直ぐに驚きだけを残して消え、次に訪れたのは、温い体温。それは痛みを和らげるほどの優しい温度。胸の奥が痛んだ。かわりに咽喉の奥がジリジリと焼け付くような感覚。これは、なんなのか。

「返事!!!」

「は・・・はい!!」

「よし!」

思わず返事をしてしまった。でもぼたんは、それに満足気に笑った。それはとても可愛くて。すごく、すごく可愛いて。
頬から離れる手。クルリと翻った小さな背中に、俺は咄嗟に手を伸ばそうとしていた。掴もうとして、空を切る右手がゆっくりと冷えていく。ヒラヒラと揺れる手を掴みたい。でもつかめない。それは距離ではなくて、なにか壁のような何かがあった。
しばらく彼女の後ろをついて歩く。その背中を同じ歩幅で追いかける。林を抜けて、土の道からコンクリート舗装された道に出てきた。

「雨、降りそうだねぇ。」

「そうですね。」

気持ちの入っていない返事だと思った。まだ少し頭がぼんやりとしていて、何か薬で痺れているように働かない。さっきまでの暗澹とした思いはどこに行ったのだろう。
海岸沿いを二人で歩く。確かに空気が少し時化って、風も強くなってきた。早めに戻ったほうが良い。でも、もう少しこうして二人で歩いていたい。この居心地の良い場所から離れたくない、だから。

「用があるなら、今度から俺に言ってください。
 付き合いますから。」

「へっ?いや、でも・・・。」

突然戻ってしまった話題に、ぼたんが困惑しているのがわかる。でも俺も譲るつもりは無い。だって貴方に何かあったら、それは困る。こんなに居心地の良い場所を、無くすのは惜しいから。金銀や武具なんかよりも、ずっと大切にしたい。

「貴方に一人で出歩かれるよりは、ずっといいんです。
 そうですね、もしそうしてくれるなら、良い物をあげますよ。」

「いい物?
 なんだいそれ?」

小首を捻り、いいものを探すぼたんが、俺の顔を覗きこむ。
優勝者の願い事。それを貴方にあげても良い。この闘いの対価。それを貴方が受け取れば良い。でも今それを言えば、貴方はきっと断ってしまうでしょう。だから今は笑ってかわす。

「内緒ですよ、今はね。」

「えぇええ気になるね。
 教えてくれてもいいじゃないのさ!!」

「この大会が終わったら、ですよ。
 だから一人で出歩いたりしないでください。」

への字に曲がった口が少し可笑しい。焦れったそうに気を揉んでいるのに、期待に頬が緩んでいる。本当にどこまでも正直で可愛い人だ。こちらまで楽しい気分にさせてくれる。

「大会が終わったらだよ。
 そしたら、絶対貰うからね!!」

「はい、必ず差し上げますよ。」

この大会が終わったら。渡すには、俺は勝たなくてはならない。でなければ優勝の対価は手に入らない。横を歩く彼女のキラキラとした目を盗み見る。凍矢の言っていた光。その意味が、なんとなくわかった気がする。
もし得られるなら、俺もそれが欲しいと思う。




それでも、その時の俺はまだ知らなかった。
光の先にあるもの。
その名を知る日が、もう直ぐそこまで来ていることを。


その時の俺は、まだ知らなかった。




END

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あとがき
結構な難産だったよ。1日考えて考えて、タイミングが中々つかめず。どこに四聖獣と幻海おばあちゃんの死との間のワンクッションを入れるかを悩んでさ。単行本読み返してみたり、アニメ見たり、軌跡を考えたりして、どうするべぇと悩んだ結果がココでした。色々考えたんだ。偽者の件はちょっと早すぎるし、でも雪菜の一件では蔵馬蚊帳の外だったし・・・・で結局準決勝前ということに。個人的にはもうちょっとはやめの段階でしたかったんだけど、クッション内容にも悩んじゃって。

最初は凍矢の云々は何も無かったんですけど、丁度良いタイミングだと思って挟んでみた。挟んだらそれがメインになってくれた。そもそもクッションの中身を決めてなかったんだから、本当に行き当たりばったりも過ぎるってもんだ。そんな状態で話を進める私も私だな。さすがB型。おかげで書く順番がぐちゃぐちゃ。
元々はアニメのラストで、凍矢が光の先にあるものの答をちゃんと蔵馬に伝えていたのがきっかけで、いいなぁと思ったんだ。そもそもなんで蔵馬はあんなに光の先にあるものを聞いてきたのかなぁとか。他のキャラには無かったのに。蔵馬も光と闇では後者の属性っぽいし、光に焦がれるっていうのは、なんとなく理解できたからかなぁとか。それと蔵馬の優勝の願い事が何だったのか、結局不明だったので、色々ドッキングしてこんな話。幽助はおばあちゃんだし、飛影は主催者の命だったからラッキーで叶っちゃったし、桑原は雪菜さんに危険がないようにだし。でも蔵馬だけは、何にも明言されてなかったし、せっかくなんでネタにしてみた。
ちなみに凍矢は今後もちょくちょく出てくる予定ありです。飛影以上に使い勝手がいいのは、おそらく蔵馬と似た空気を持ち合わせているからかな。絡ませ甲斐があります。

ということでこの話があって、先に書いたお題4の蔵馬の”信じていて欲しい”という台詞に繋がります。多分話の時系列に読み直すと、繋がるようになると想います。
ちなみに最初の妖怪二人の啖呵が一番難しかった。貧困で困る。
yuiさん / 2008/04/22(Tue) /
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