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日記兼二次小説スペースです。 あと、時々読んだ本や歌の感想などなど。 初めての方は、カテゴリーの”初めての人へ”をお読みください。
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典型的なB型人間。
会社では何故かA型と言われますが、私生活では完全なB型と言われます。
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関西在住、性格も大阪人より。
TVに突っ込みを入れるのは止めたい今日この頃。
趣味は邦楽を愛する。お気に入り喫茶店開拓
一人が好きな割りに、時折凄く寂しがりやです。
字書き歴7年近く。
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これまた大好きな作品。
フェス君の素直じゃない性格と素直すぎるまどか君が可愛いんですよ。
あぁ魔界寄宿舎編ものすごくみたいよぉ~。
これについてはまた語りたいと想うので、とりあえず小説だけあげちゃいます。
以前に某大好きサイト様に捧げた小説なんですけどね。
加筆修正一切なしです。

何度でも

 

 

 

「うわぁ~まっくらだ!!
 一郎君、時間解る?」

フェスは携帯を取り出すと、暗闇の中で液晶画面がはっきりと光る。
草を踏みしめる音と、少しだけ冷えた空気。
夜の静寂の中では、まどかの弾む声は、余計に目立つ。

夏の夜は、子供の心に特別な、少し早まる鼓動を与える。
普段なら、家で母親と食後の団欒をしているだろうか。
それとも、部屋で宿題をしているだろうか。
そう想えば想うほど、友達が隣にいる違う日常が、それだけで特別になる。

「9:16。
 結構早く着いたな。」

「そうだね。
 一郎君が飛ばしてくれたから。
 ありがとう。」

「別に・・・大した距離じゃねぇしな。」

少し角ばったフェスの言葉にも、まどかは、ただ嬉しそうに微笑む。
あまりにストレートな感謝に、フェスはどうすればいいかわからず、ただ天体望遠鏡をセッティングを続けた。

 

 

 

 

 


「星座を探しましょう。」


星座早見表を手に、担任がそう言ったのは、先週初めのことだった。
夏休み目前最後の理科の授業。
単元は天体。
クラスの中には、数名が授業が好きな者がいるらしかったが、 あいにくフェスの興味は引けなかった。
魔族の中でも上流の流れを汲むフェスは、魔界の漆黒の闇と星の輝きを知っている。
だが、どうもお隣は違うらしいく、新しいおもちゃでも貰ったのかと見間違うほど、真新しい早見表をくるくると回している。

「夏休み中に、今から配る用紙に、星座を探して、スケッチしてみてください。
 どこで、いつ、どんな星座がみれたか、先生に教えてください。」

温和な声とは裏腹に。
よほど信用されていないのか、近年の小学生。
サボり防止のためだろう。
親に証明印を貰って来ることという注意書きまで書かれている。
だが、その読みは実に正確。
特に、適当にでっち上げる予定をしていた、一郎にとっては。

一郎の思惑を崩したのは、なにも教師だけではなかった。
夏休みに入ってから、初めてまどかが、笛烈家を訪れた日のこと。

「一郎君、星座ってちゃんと見える?」

それは、酷く沈んだ表情でまどかが、フェスの顔を見た。
話を聞けば、まどかには、いくら探しても星座がちゃんと見えない・・・というのだ。

都会は明るい。
外灯の明りや家の明りがあり、部屋の窓から見た空は、よほど明るい星でなければ見えない。
それに加えて、まどかは常時眼鏡を必要な視力。
明るい夜に、星座を見つけるのも一苦労だという。
一方フェスは、光のまったくない場所であっても、困ることなど何もない。
相手の気配や魔気の流れで、解ってしまうのだ。
人間は大変だなぁ・・・と暢気に想っていたフェスは、その時、不覚にも忘れていた。
いつの間にかいた、同席者の存在を。

「そういえば、あんた天体望遠鏡持ってたじゃない。
 叔父様に、誕生日プレゼントで。」

「そうだったわね。
 1月で埃を被ってるアレ・・・まだあるんでしょう。」

アレは、何年前だっただろうと思い返してみる。
星を見るには不便は無いフェスでも、天体、それも月や惑星となると、さすがにそうも行かない。
そこで、誕生日の度に山ほど送られてる叔父からのプレゼントから、それを選んだことがあった。
母は1月といったが、実際は3日で飽きて、魔界の実家にはあるはずだ。

「あぁ、魔界に置いてきたけど・・・。」

「取ってらっしゃい。
 今すぐ。」

「おい・・・・馬鹿姉。」

「そうね、それを使えばまどか君だって観察できるだろうし。
 あんただって宿題出てるんでしょ。
 一緒に仕上げてしまいなさい。
 まどか君、今晩ウチに泊まれる?」

「えっ!!
 はい・・・お母さん夜勤だからメールで連絡を入れれば・・・・」

「なら、問題ないわね。
 今日は、マナちゃんに言ってご馳走を作ってもらいましょ!!」

「いや、母・・・・。」

「そうだ、隣町に星が綺麗なスポットっての、聞いたことあるわ。
 調べてあげるから、今晩は天気もいいし・・・・」


こうなってしまえば、フェスの静止の声など、ないも同然。
まして隣から、まどかの少し申し訳なさそうな視線。

もう問答さえ許されなかった。

 

 

 

 

 

 

「見えた!!
 見えたよ!!!一郎君!!!」

「はいはい。
 とっととスケッチしろよ。」

「うん!!」

はしゃいだ声を抑えきれないのか。
まどかは、何度も、レンズを覗き込んでは、スケッチを続ける。
その間でさえ、歓声は止まない。
そんな姿を見てしまえば、お世辞にも素直といえないフェスでさえ、連れてきて良かったと思う。
それほど、まどかの素直さと純粋さは、魔界育ちのフェスには稀有なのだ。
いや、これは、魔界に限ったことではなく、人間界であっても同じことで。
まったく擦れることなく育っただろうことは、疑いようも無く、だからこそまどかの表情は、疑うこともできない。

 

 

疑うということは、辛い。
疑われることも、疑うことも比べる術もない程辛い。

疑うから嘘をつく。
疑われるから嘘をつく。

嘘をつけば、嘘を守らなくてはならない。
嘘を守るためには、嘘をつかなくてはならない。

そして、嘘をつくから疑い疑われる。

自分も人も。

 

 

「綺麗だねぇ。
 星ってこんなに明るいんだ。」

感激しきった声だ。
レンズを覗き込んで、星に夢中のまどかの後ろ。
フェスは、星を見ることなく、まどかの後姿を眺めていた。
その頬が緩んでいることは、まどかは知らない。

「これが、こと座で、一番明るいのが一等星ベガ。
 書けたら、ちょっと離れろ。」

フェスは、一度まどかを望遠鏡から離し、経緯台を調節しては、レンズで位置を確認する。
そして、最後にしっかりとネジを締めた。

「覗いてみろ。」

「うん。」

言われ、まどかがレンズを覗き込む。
そこには、ベガより心持ち小さいと思わせる星が最初に見えた。

「それが、はくちょう座のデネブ。
 見えるか?」

「うん、綺麗に見えてるよ。
 これ、授業でやったやつだよね。」

「あぁ、夏の大三角形。
 一番見えやすいからな。
 ついでにわし座も見るか。」

「うん。」

フェスは、もう一度経緯台を調節する。
その姿を、まどかは、ワクワクしながら眺めていた。
自分に、何かを見せようとしてくれている。
あの、フェスが。
できるだけ、人を避けるフェスが・・・自分に。

それだけで、まどかにとっては、嬉しくてたまらないことだった。
嬉しくて、うっかりと自惚れてしまいそうなほど。

(友達に近づけたかな?)

そんなこともまた、まどかの声を弾ませていることを、フェスは知らない。


「ほら。」

呼ばれてまどかは、もう一度レンズを覗く。

「わし座のアルタイル。」

「先生の言ってた、彦星の・・・だよね。」

「ベガが織姫な。」

思い出して、まどかは、今度は何も使うことなく夜空を眺める。
やはり見えるのは、一等星のベガぐらいなもので、うまく線が結べない。
だが、まどかはまっすぐ前に手を伸ばした。
その様子をいぶかしんだのか。
フェスが、まどかの顔を覗き込んだ。

「どうした?」

「いや・・・織姫様と彦星様、ここから見たらこんなに近いのに。
 会えないの・・・辛いだろうなぁって・・・・。」

思わず、フェスは返答に窮した。
思い起こせば、まどかはサンタクロースを信じていた。
ならば、同じように七夕の物語を、そのまま信じていてもおかしくは無い。
いや、一般的な基準を言えばおかしいかもしれないが、十分にありえる想定範囲内のことだ。

「そ・・・そうだな。」

「僕だったら、凄く辛い。
 会いたいのに、会えないなんて、きっと凄くさびしいよ。
 仲が良かった頃のこと、考えたら余計に会いたいって思うよね。」

自分のことではないのに。
まどかの言葉に、フェスは、酷く胸がつままれるような心地がした。
おそらく、自分達の世界が大きく違うことを、まどかよりフェスの方が、ずっと重く知っているから。
いつかは、世界の違いが、別れを連れて来るのではないかと、フェスは心の片隅に置いていた。

だが、それでもいいと思っていた。
少し前までは、それでいいと。
離れても、別に何も問題なんてないと・・・。


なのに、今確かに、フェスの胸が痛んだ。

 


「・・・だったら。
 僕だったら・・・そんの嫌だ。」

 

 

クソ真面目で、いつも自分の後ろをついてきて。
厄介な扉を抱えて、面倒ごとばかり持ち込んできたまどかが。

 

 

「もし、今一郎君と会えなくなったら、凄く辛い。
 そんなのやだよ。 」

 

 

フェスが、自身を偽れないほど、必要としていた。

 

 


「まどか・・・・。」

 


だがフェスも、それ以上の言葉が、出ない。
何を言えばいいのか、問われたわけでもないのに・・・・。
そんなことはないと、言ってやれそうにもない。
でも、 意地を張るには、もう手遅れだった。
フェスは、もう嘘をつくことのない、偽ることのない。
そんな居場所の心地よさを、知ってしまった。


そして 、まどかもこれ以上になにを言えばいいのか、戸惑っていた。
フェス が言葉に困っていることを解っていても、どうつなげていいかわからない。
思いつくままに言ってしまった言葉だが、それだけに、自分本位の感情だと我にかえった。

数秒だったか、数分だったか解らない。
だが、とてつもなく長く感じられた沈黙だった。

 


「観察、終わったなら片付けるぞ。 」

「あっ、う・・・・うん。」


そう言って、なんとか、会話を無かったことにすると、一郎は一人、望遠鏡を片付けはじめた。
まどかも言われたとおり、シートの上を片付ける。
中途半端に終わってしまった会話が、気まずく、蝉と葉の音、片付ける物音だけが、やけに響いた。


楽しかった空気が、まるで風船が萎んでしまったかのように、消えてしまった。
まどかは、申し訳なくて仕方が無かった。
自分の不用意な言葉で、フェスを困らせた。

(一郎君にとって、僕は友達じゃないのに・・・・。
 あんなこと言ったら、一郎君が困るに決まってるのに・・・。 )


自分の言葉に嘘は無いが、だからと言って、同じ問いをフェスに投げていいとも思えない。
フェスの優しい一面を知っているからこそ、困らせるような言葉を言った、自分をまどかは恥じた。
背中越しに感じるフェスの気配に、まどかは少しおびえていた。

(怒ってるかな・・・・。
 怒ってるよね・・・。
 せっかく、こんなところまで連れてきてくれたのに・・・・。 )


だが、まどかが、口を開こうとするより先に、フェスの声がした。

 

 


「ほうき・・・けっこう速いだろ。」

「へっ?」

あまりに脈絡ないフェスの言葉に、思わずまどかは、間の抜けた声しか出なかった。
思わず振り返るが、フェスは望遠鏡を片付ける手を休めてはいなかった。

「だから、今日乗ってきたほうき。
 速いこと、ここついただろう。」

「あぁ・・・うん。
 そうだね」

何が言いたいのかは、はっきりとわからなかった。
ただ、フェスが少しだけ視線をそらして、ぶっきらぼうだが、怒っているという声ではない。
少しだけ、まどかもわかるようになった。
これは、フェスが何かを伝えようと、必死になっているときだ。

「重さとか、そういうのにもよるけど。
 まぁ、俺一人なら翼の方が楽だし、短い距離なら疲れないから。」

「うん。」

「だから、別に離れたって、結構簡単に会いにいける・・・と思うけど。」

何が言いたいのか、フェスは、自分でも解らなくなりそうだった。
ただ、伝えたいことは、はっきりしていて。
まごつく口を。
勝手に熱く頬を、落ち着かない鼓動を。
素直になれない自分の全てが、フェスには呪わしい。
ただ、会わなくても平気だ・・・なんて嘘はもうつけなくて。
それでも、素直にはなれなくて、不器用だけれど。
伝えたいことだけが、はっきりしていた。


「だから、別に会いたいって思うなら、会えるだろう。
 車でも飛行機でも、ほうきでも何でも使えば、会えるだろう。」

「・・・・一郎君。」

気を抜けば、まどかの視線は、揺らいでしまいそうだった。
あまりに普段のフェスからは、聞けない言葉で、それは、受け止めるには大きくて。
痛くて嬉しくて何ともいえない。


「お前が、会いたいって思うなら・・・」

「思うよ!!
 絶対思う!!!
 一郎君が思わなくて、僕は絶対一郎君に会いたい!!!」

「わかった!!
 わかったから!!」

力強くうなずき、力説するまどかを、一郎が制する。
なにか、凄く喜んでいるらしいまどかの勢いに、押されてしまう。


「終わったか。」

「うん。」

 


確かな言葉ではなかった。


 

「なら帰るぞ。」

差し出された手を、まどかが両手で握る。
少しフェスが驚いた表情を見せたが、すぐに顔を背けて歩き出した。


フェスの言葉は、絶対も必ずもなかった。
あやふやで不確かな方法だったが…。
それでも

(手を差し出してくれた。)

フェスから。
それだけで、まどかの中にいた不安がかすんでいく。
フェスの手は大きく、暖かかった。


(織姫様と彦星様が、僕の願いごと、聞いてくれてた。)


そう、夜空に感謝しつつ、夏の夜は深まっていった。

 

 

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