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日記兼二次小説スペースです。 あと、時々読んだ本や歌の感想などなど。 初めての方は、カテゴリーの”初めての人へ”をお読みください。
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典型的なB型人間。
会社では何故かA型と言われますが、私生活では完全なB型と言われます。
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関西在住、性格も大阪人より。
TVに突っ込みを入れるのは止めたい今日この頃。
趣味は邦楽を愛する。お気に入り喫茶店開拓
一人が好きな割りに、時折凄く寂しがりやです。
字書き歴7年近く。
インテリ好きですが、私は馬鹿です。
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短編です。
シリアス書こうとしたらふと浮かんだネタです。
まぁ、もうタイトルからして、想像がつくとは思いますが、


めっちゃ甘いです。

そりゃもう、生半可な覚悟では、無理な甘さです。
もうただの馬鹿っプルです。
今回は銀さんだけじゃなく、新八も完全に緩みまくってます。

渋いお茶か、激濃いエスプレッソを用意して、暇すぎて堪らんと言うときに読んでいただくことをおすすめします。
っていうか、お願いします。



































これが新八の耳に入れば、彼は顔を真っ赤にして剥れるだろうことは、銀時も知っていた。


”新八は可愛い。”


何度か言った事がある。可愛いと。
もちろん男の新八が、可愛いといわれて喜ぶとは銀時も思ってはいない。きっと銀時が言ってやって新八が喜ぶのならば”いい男になった”といえば、新八はこの上なく喜ぶだろう。新八が銀時を一人の男として慕ってい、目標としていることを考えれば、恋人としてというよりも、一人の人として、男として認めてやれば、喜ぶことは知っている。むしろ可愛いという言葉は、その真逆と言ってもいい。
しかし、それでも銀時は思うのだ。新八を可愛いと。

たとえば、下手糞な歌を歌いながら料理を作っているときの後姿。丸い頭。正座をしたときに見せる白いたび。その中に隠されているだろう足の指を形。丸い肩。切りそろえられた爪。そんなところまでが可愛いと思ってしまえることを、銀時は自分でも拙いと思っている。思ってはいるが、好きなのだ。惚れた相手を可愛いと思わないわけがないのだ。

可愛いから惚れたのか。惚れたから可愛いのか。

卵か先か、鶏が先か。不毛な水掛け論としか言いようがないが、結論が変わるわけではない。そんなことに時間を費やすよりも、銀時は、もっともっと新八を大事にしたいと思う。



しかし、可愛いからこそ怒らなければいけないこともあるのだと、銀時は実感をしていた。







初恋番地








もぞもぞと胸元のくすぐったさに、銀時は目を覚ました。ぼんやりとした視界を数度開けては閉じてを繰り返す。次第に身体の感覚が戻ってくる。すると腕の中に違和感を感じた。柔らかいというよりも少し固くて大きな感触に、チラリと視線を下に下げた。すると目に飛び込んできたのは、丸い頭の頂。可愛いつむじが曝されている。

それを見た瞬間、またかと言う感想以外出てこなかった。こんなことは、もうここ数日続いている。そして銀時は、毎度のごとく、その腕の中の塊に、声をかけた。


「新八。
 お前何やってんの?」

銀時の声に、小さな頭からもそっと顔が上げられた。そのにこやかで嬉しそうな笑顔は、まるで子犬が飼い主に向けるそれだ。嬉しくてたまらない。楽しくてたまらない。そんなもので目をキラキラとさせて期待に唇が緩みきっている。

「おはようございます。
 銀さん。」

「おはよう、新八君。
 で、俺の質問のお答えは?」

銀時が促すが、それにも新八はへらへらと笑い、さらに銀時の胸に顔をもぐりこませた。こうなると逆に銀時が新八のお人形にでもなったような気にもなってきた。

「銀さんが寝てたか。」

そして、理由になっていないようなそれを、平然と新八は言ってのけた。さすがの銀時も頭を抱える。ここしばらく、新八はずっとこんな調子なのだ。




銀時と新八が互いの想いを確認し合い、上司と部下、家族で仲間からさらに恋人と言う関係に変化したのは、二ヶ月ほど前のことだった。

出会った頃から、銀時は新八を大事に思っていた。それは新八が出会ったばかりの頃から、自分を純粋に慕っていてくれているのを感じていたからだった。どれだけ口では悪く言っても、その奥底には早々のことでは揺るがない好意がいつもあった。真面目で嘘をつけない新八の気性は、出会ったばかりですでに知っていた銀時としては、その好意を嬉しく思わないわけがない。
元々銀時は面倒くさがりではあったが、その反面面倒見の良い男であった。むしろ面倒見が良い所為で他人の騒動や問題に巻き込まれてしまい、それを見過ごせない。だからこそ面倒くさがりになったのだ。だからこそ、新八や神楽のように全力で自分を好いてくれている子供を、愛しく思うようになるのに、大して時間はかからなかった。
その愛情は深く、上司と部下、家族と形を変えていく中で、さらに深く大きく根を張っていった。

だが上司部下、仲間、家族と形を変えていく中、神楽や定春と違い、新八への想いだけはさらに家族とは違う、欲を伴う愛情が銀時の中に生まれてしまった。それはおそらく銀時と新八が侍と言う同じ道を歩むものだからこそ生まれたところが大きい。
自分を真っ直ぐに焦がれるように見る目。それを銀時の目に熱が生まれる。その真っ直ぐで優しい眼差し。それを自分だけの物にしたい。銀時の新八の想いは完全に一致していた。

しかし、新八が口火をきるまで、銀時は新八に想いを伝えるつもりはなかった。銀時にとっては、新八が恋情を抱くほど愛しい存在である。触れたい、愛したい、伝えたい。気持ちは逸った。しかし愛しい存在であると同時に、新八は子供でもあった。まだ今は彼の子供としての時間を大事にしてやりたい気持ちが銀時にはあった。
だがそれは大人の都合でしかなく、子供である新八がそんなことを知る由もない。新八はその想いを口にした。好きだその恋情をその瞳のまま、真っ直ぐに銀時へとぶつけてきた。そんな子供を愛しく思う銀時がそれを拒否できるわけもない。銀時は迷いながらも、差し出された手を、我慢しきれずに引き寄せた。

そうして恋人となって二ヶ月。喧嘩らしい喧嘩もせず、互いを心から愛しく思っている。回りからの反対も一件新八の姉お妙からはあったが、それ以外は皆祝福さえしてくれた。
二人の関係は、一見すれば順風満帆といえるだろう。


しかし依然として、二人の間には、一つ問題が残っていた。



「新八、こういうのは駄目だって前にも言ったよな。」

銀時は新八の小さな額をパチリと軽く叩く。いや叩くというよりも触れたというほどの軽さだった。それでは怒っていることにはならない。むしろ甘やかしているのも同然といえる。それが分かっているのだろう。新八は銀時と咎めに唇を尖らせるようにするだけで、頬の緩みを止めないまま、銀時の腕の中から出ようとはしなかった。

「いいじゃないですか。
 恋人に甘えちゃいけないんですか?」


まるで挑発するような口ぶりに、銀時はため息を吐く。もうとがった唇は、口付けを強請っているようにしか、銀時には見えない。


そう、問題とは恋人となりすっかり子供返りでも起したかのような、新八の豹変振りだった。


恋人となり、新八の好意は以前にもまして、ストレートにそして大胆になった。もちろん銀時が新八を子供としてみている一面があるように、新八もまた銀時の中に早くに亡くした父性を見ている。銀時と新八の関係は恋人であると同時に、多くの多面性を兼ね備えていた。そのことは銀時も承知していたし、それも全て含めて新八だと思っている。それゆえに新八が自分に甘えることで、過去の寂しさを埋めようとしているのならば、いくらでも付き合ってやりたいと銀時は思っている。

しかし、それは消して簡単なことではなかった。銀時はそのことを理解していなかった。



「恋人に甘えるのはいいけど、布団にもぐりこむのは駄目。
 お前にはまだ早い。
 抱きつくのは、俺が起きてるときにしてくれ。」

先ほどよりも少し厳しい声を意識して咎め、額を人差し指でぐりぐりと押すと、新八は不満そうに、それでいながら諦めきれず強請るような視線を向けてくる。正直銀時としては、その視線にいくらでも答えてやりたい気もする。新八が望むまま、自分が望むまま、新八を貪ってしまいたい気持ちだ。
しかし今の銀時はそれを自分に禁じている。

「ケチ。」

「ケチで結構。
 とにかくまだ駄目。
 ほら、飯できてんの?」

「もう出来てます。
 神楽ちゃんは食べて遊びに行きましたよ。」

「うんじゃ、起きるか。
 ほら、出た出た。」

このままでは埒が明かない。そう思った銀時は、まず率先して自分が掛け布団を剥がし、身体を起した。自分が望んだものが出て行った。そのことに残念そうに新八が顔をゆがめたが、銀時はそれを無視した。仕方なく新八も身体を起す。しかし新八はそれでも懲りていない。今度は銀時の背中からぴったりと抱きついた。おそらく神楽が見れば、コアラの親子とでも揶揄しただろう。実際に一度そういわれている。

「新八君、銀さん着替えが出来ませんが。」

「もうちょっとだけ。」

そうして銀時の背中に、新八は頬を擦り寄らせた。しかしこの新八のちょっとだけ、がちょっとで終わったためしがないのだ。だがそれを直接言ってしまっては、新八が意地を張るのは、この二ヶ月で経験済み。何より、新八はこうしてくっついているのが目的ではない。むしろ、新八は銀時が差し出すものを期待しているのだ。
それを証拠に銀時が首を捻って、後ろを見ると、期待するような目が見上げてくる。それにため息をつきたくなるのを堪えて、銀時は新八の腕から逃れて身体を捻る。

「新八。」

名を呼んで、そして頬にそっと唇を触れさせた。ちゅっと音が立つ幼い口付け。それはすぐに離れて、顔を覗き込んでやる。すると真っ赤になった顔があった。嬉しいような困ったような顔に、銀時の方が困ってしまう。

「ご飯、頼める?」

「ハイっ!!!」

恥ずかしさに居たたまれない気持ちもある新八は、すぐに立ち上がる。しかし恥ずかしいだけでないのは、銀時からも一目瞭然である。嬉しい恥ずかしい照れくさいでも甘えたい。今新八の中は、それらの感情がいつも綱引きをしあい、揺れ続けている。それを象徴するように、新八が出口の襖の前に立って振り返った。

「銀さん。」

「うぅん?」

「大好き!!」

子供のような笑みで、好意を囁き、そして恥ずかしさに顔を真っ赤にさせながら、新八はパタパタと和室を出て行った。それは本当に愛らしく、可愛いという言葉を形にすれば、新八の形になるのだろうといいたくなる。

「アイツは・・・・。」

思わずうなだれ、掛け布団に突っ伏した銀時は、困り果てていた。しかし幸せと悩みの板ばさみに、銀時は自分がどんな顔をすればいいのか、まったく分からなくなってしまっていた。










新八の子供返り。その原因の一端は、銀時自身にあった。それは告白のときに遡る。

新八の思いを告げられ、拒むことの出来なかった銀時は、その時新八にひとつの約束をした。いや、約束と言っていいのかさえ分からない。あやふやな誓いだった。

それが、しばらくは新八には手を出さないと言うものだった。

しばらくと言うのがいつまでのことを指しているのか。手を出さないとはどこまでのことを指しているのか。それさえ曖昧だったが、それでも銀時はあえて、新八にそう告げた。どうしてかと問い返す新八に、銀時は正直に包み隠さずその理由を告げた。
銀時にとって、新八は恋人であると同時に仲間であり子供であった。それに対して子ども扱いをして欲しくないと反論する新八だったが、実際に新八が未成年である以上、関係をある段階まで進めてしまうと、世間的には銀時は問題視されてしまう。それは理屈ではなく、社会がそうなのだ。新八が何を言ったところで、新八には罰を背負うことさえ許されない。それでは、新八が銀時に罰を背負わせるのと同然だった。
しかし、それはあくまで理由の一端でしかない。それ以上の理由が銀時にはあった。銀時としては、新八の今を大事にしてやりたかったのだ。新八の子供として、一人の少年として真っ直ぐに育つ様を、見守りたい。今の新八のありのまま、子供のまま愛したい。しかし関係を急いでしまうと、どうしても新八の心は、成長を急がされる。銀時を通し、大人の良さも知るだろうが大人の理不尽さや狡さも知ってしまう。それはどうしても避けられない話だった。

だからもう少しだけ、と。それさえ自分の大人としての理屈であり、狡さだと銀時は気付きながらも、新八に誓いを立てたのだった。



しかしそれがまた別の問題を引き起こした。それが新八の子供返りだ。


無事に恋人になれたこと。こういう関係が初めてなこと。そして銀時が手を出さないと誓いを立てたこと。それらが合わさり、新八は銀時に今まで以上に無防備になってしまったのだ。
最初の頃は良かった。銀時の隣に座っていると、こっそりと指を絡めてきたり、風呂上りに髪を梳かしたがったりと、銀時としては嬉しく、逆に銀時からも新八に額に口付けたりもしていた。
だがそれが次第にエスカレートしていく。神楽の目の前だと言うのに、銀時の料理中に後ろから抱きついたり、外から帰ってくると唇を強請ったり、バイクに乗ると必要以上にびったりと身体を巻きつけてきたこともある。外ではしないだろうと思っていた銀時は、その時は流石に慌てた。関係がばれること以上に、恥ずかしがり屋な新八らしからぬ行動に、驚いたのが大きかった。しかしそんな銀時を他所に新八は”だって落ちたら危ないし、恐いですから”と平然と言ってのけた。
この頃になると、銀時も新八の甘えに困り始めてくる。

もちろん新八は可愛い。甘やかすだけならば、なんら問題はない。恋人としても父性としてもだ。しかし過剰になると、流石の銀時でさえ抱えきれない。抱きつかれる度に、服越しに体温を感じ、キスのたびに唇から零れる匂いに眩暈を覚え、何より全部大好きといわんばかりの好意を見るたびに、自身が立てた誓いがグラグラに揺れるのを、銀時は感じていた。

そして毎朝のように布団の中にしのびこまれるのだ。もちろん銀時は一流の侍だ。人の気配を読むことにかけては、そこいらの二流以下に遅れを取ることもない。しかし銀時の場合一流であるが故に、新八の行動を察することが出来ない。なぜなら、銀時の能力は戦場に身を置き、いつ夜襲にあい、いつ寝首をかかれるか分からない。そんな生活を長期間過ごしたことで、作り上げた能力だ。しかし誰しも24時間気を抜かずに敵に気を配るなどできるわけがない。それゆえに銀時の無意識の判断で、敵味方を選別し敵が自分の間合いに入り込んできたときにのみ身体が反応する。そして味方であるものに関しては常時センサーは外されている。そうすることで、神経への負担を減らしているのだ。
それに関しては、生まれ持った能力として備わっている神楽や、命の取り合いを経験はしていても、戦場を経験しているわけではない真撰組ともまた一線を画している。
そんなセンサーだ。銀時が誰より可愛がっている新八に反応するはずもなかった。

銀時としては堪ったものではない。空腹限界の狼の口に兎を放り込んで、食うなと言うような残酷さだ。なのに兎は無防備に逃げることさえしない。




はっきりといえば、理性が持たない。
しかし新八を強く咎めることも、憚られる。


そんな悩みに銀時が頭を抱えていることなど、新八が知るわけもなく。そしてそれゆえに、新八は銀時の引いていた一線を簡単に越えようとした。










「新八、ちょっと座れ。」

銀時は、自分の横を指す。すると風呂から上がってきた新八が、チラチラとこちらの様子を伺うようにしながら、座った。すでに銀時の不機嫌さを感じ取っているのだろう。怒られるという予感を感じて、流石にいつもよりも気まずげな顔をする。
しかし、これ以上新八をただ甘やかすというわけにはいかないのだ。

「新八、さっきのアレ、どういうことだ。」

「どうって、別に。」

「別に?
 何?」

「だから、銀さんの背中流しそうかなぁって・・・・。」


ぼそぼそと言う新八に、銀時は今まで溜め込んでいたため息を盛大に吐いた。

そう。新八は自身が言うように、先ほど銀時の入浴に”背中を流す”と言って入ってきたのだ。流石の銀時も、それには驚きのあまり目を剥いた。なぜならその時の新八といえば、裸にタオルを一枚腰に巻いただけのあられもない姿だ。頭を殴られたかのような衝撃に、銀時はすぐに反応を返すことさえ出来なかった。そんな銀時のことなど構うことなく、新八は風呂場に入ってこようとする。そこで漸く銀時は我に変えり、すぐさま新八と入れ替わるように、浴室を出た。それに驚いた新八が惑っている隙に、外から戸を押さえつける。そこで、如何したのか?と聞いてくる新八に、眩暈とそれ以上の怒りさえ覚えながら、銀時は新八を言い含め、とりあえずまず新八に風呂を入らせた。そして今に至る。

「お風呂一緒に入るぐらい、恋人なら普通なんでしょ。」

そしてまだこんなことを言っている。これには、銀時の新八が本当に何も分かっていないのだと思い到る。順番も何もかもが分かっていない。しかしそれだけでは足りないのだ。銀時は、一瞬で腹を据えた。

「じゃあ、いいんだな。」

「えっ?」

銀時の声が変わったことに、新八も気付く。しかしそのことに気を取られ、反応は遅れた。
手首を取られ、肩を少し押される。それだけで、新八の身体は簡単にソファの上に転がる。視界が急激に変わったことについていけなかった新八に、すぐに銀時の身体が覆いかぶさる。

「ぎんさぁ・・!!」

「恋人なら、普通だろう。」

そういって、銀時はそれまでよりもずっと乱暴な仕草で、新八の身体を押さえつけ、首筋に顔を埋めた。耳の下を舌でぐっと押される。普段はまったく意識もせず、触れることない場所に触れられる。その恐怖と未知に、新八の口から悲鳴のような声が上がった。

「神楽が起きるから、静かに。」

「やぁ・・なんでぇ。」

「恋人、だからだろう。」

新八の疑問に、新八が何度も繰り返してきた”恋人”という答えで銀時は返した。これもまた大人の卑怯さだった。新八の幼さと無知を正しさとして相手に突きつけて、動きを封じる。自分の言葉ゆえに否定できない新八を、混乱させて正常な判断を奪う。

大人の手管。

そのまま喉を食み、逃げようとする丸く幼い顎を舐めて、ゆっくりとそして新八に見せ付けるように、銀時はその唇を重ねた。最初は、呼吸を許しながら唇を軽く噛みつつ愛し、じっくりと深さを増す。唇を舐め吸い付き、抵抗を許し上がる声と呼吸と表情さえ楽しむ。そして最後は、それら全てを奪った。

シンっと静まり返る夜の音を聴きながら、ギリギリまで銀時は踏み込む。理性や優しさと言う命綱を握りながら、深い欲の中へと。


「っ・・・つふぅ。
 新八。」

唇が離れ、ほんの少しだけ距離が出来た。新八の顔は苦しさと恐怖。そしてそれ以外の大きすぎる戸惑いに呆然と表情を固めてしまっている。そしてその反面、目は見開かれ、自分の中の大事な物が崩れそうになるのを堪える緊張感がある。それが痛々しいと銀時は思う。しかし生半可な言葉では、いけないと思ったのだ。

「ごめんな、新八。」

ゆっくりと新八の前髪を掻き分けて梳く。滑らかで柔らかい髪は、すぐに銀時の指から逃げてしまう。
それでも銀時は、新八の頬に手を添えて、安心させようとする。そして心を告げる。矛盾したどうしようもない心を。



「まだお前には手を出さないって言ったのは、嘘じゃない。
 そうしたいと思ってる。
 お前を心底大事にしてやりたいし、愛してやりたい。」



それは本当だった。その気持ちを手放して良しとする理由は一つもない。




「でも、お前が欲しいって思うのも、やっぱりあるんだ。
 だからそんな無防備に俺にじゃれ付くのは、流石に勘弁してくれねぇか。」



本当は、新八をずっとただの子供だと思って居たかった。ただ甘やかし、成長を見守り、大切にする。そうするだけの関係で満足していたかった。それが出来ればどれほど良かったのだろうか。銀時は時折、そんなことを思う。
しかし、銀時は執着に踏み込んでしまった。欲に囚われた。もうそこから逃れることは出来ない。どれほど大切にしようしても、どれほど優しくしたいと思っても、願っても、消えないのだ。

卑怯で、矛盾していて、汚い欲。銀時が大人である以上は、捨て去ることの出来ないそれを、他の誰に咎められてもいいと銀時は思う。しかし新八にだけは、許してもらいたいと願った。恋人だから。


「都合のいいこと言ってるのは、分かってる。
 でもな、どっちも俺は大事にしたいんだ。」


銀時の本音を知り安心した所為だろう。新八はゆっくりと身体から力を抜いた。

「僕は・・・いいです。」

「うん?」

「僕は、銀さんなら。
 銀さんだったら、何されても・・・・。」

新八の吐露した言葉に、銀時の中に、また一瞬だけ過ぎった獣。しかし銀時はそれを一瞬で屠る。新八の気持ちを疑うわけではない。新八なりに銀時を望む欲もあるのだろう。しかしそれ以上に、今の新八には恐怖心がある。銀時のギリギリでの踏み込みにさえ脅えた新八だ。それこそ何の縛りもなく全てをさらけ出した銀時を目にしたとき、新八は傷つくだろう。しかしそれを許し、身体だけでなく、自身と銀時の差を知り、それを埋めようとする。それは銀時の望む愛し方ではない。
何より、こうして新八の速度にあわせる愛し方は、新八の為だけではない。銀時自身の願いでもある。

「新八、お前も知ってるだろうけど、俺はお前の年の頃って言えば、戦場にいた。」

急な話に新八は驚き、銀時の顔をまじまじと見た。それを銀時は優しく微笑み受け止める。
銀時が自分の過去を語ることは、まずない。それは言わない聞かないという、暗黙の了解のようなものがあったからだ。それを銀時は初めて破った。
銀時は新八の身体を起し、お互いをソファに向き合って座りなおす。そして新八の両手を銀時は包み込んだ。指先から思いが伝わるようにと、願う。

「まぁそう言うところにいたからさ。
 結構殺伐としてたし、まぁ馬鹿もやった。
 お前も大体想像ついてると思うけど、色町で女買ったこともあるし、それなりに恋仲になったやつもいた。」

新八は一瞬傷ついたように眉を寄せた。しかし銀時の言うとおりだったのだろう。言葉にすることはなかった。
戦場にいて男所帯といえば、ある程度上下関係が出来るものだった。その中で自分を気に入り、いろいろと教えてくれる者が、誰しも一人二人といるものだ。まして白夜叉として功績が多かった銀時は、いろいろな目上の者から教えられ、その殺伐とし乾いた心を潤すために女を知った。それ以外にも普通の娘と恋仲になったこともある。

「でもな、お前ほど手放したくないって、思った奴はいない。」

銀時の言葉に、新八は顔を上げて苦しげに顔をゆがめた。嬉しさと切なさの入り混じったそれに、銀時は一度だけ、額をコツリと合わせた。

「お前の年頃の俺は、馬鹿で無鉄砲で・・・戦場から抜ける気もなかった。
 惚れた腫れたも全部が一時の物で、手放すのが前提だった。
 言い訳になるかもしれないけど、あそこにいた奴らは、みんなそうだった。
 大事にしたい奴がいても、全部抱え込めなかった。
 いつ死ぬか分からないから。」

心を通じ合わせ、いつかと女と将来を約束した男も居た。国に妻子を残してきた奴も居た。しかしその大半は帰ることが叶わなかった。そんな男に残された女の苦しみを、銀時は何度も見てきたのだ。

「だからな、お前に合わせたいんだ。
 お前の為ってのもあるけど、俺の為にってのもあるだ。
 俺は、新八。
 今、お前とあの頃出来なかった・・・恋をちゃんとしたい。」

恋という単語は、銀時ぐらいの男になれば、早々使うことのない言葉だった。面映く、どこか幼いその言葉を、しかし銀時は合えて選んだ。それが相応しかったからだ。あの頃はそれを飛ばした、愛しかなかった。でも今、目の前にある、この気持ちは恋だ。銀時は、そう思えることが嬉しかった。

「銀さん。」

新八の腕が伸びて、銀時の首にゆっくりと回った。膝を立て、そしてぎゅっと慈しむように抱きしめられて、銀時の心がぎゅっと締め付けられた。

「ごめんなさい。
 ごめんなさい。」

何度も何度も、銀時の頭を丸ごと抱えて謝る新八の腕の中は、とても優しく感じられた。その胸元からは、先ほどと変わらず石鹸が香り、体臭と混ざる。しかしそこから湧き上がるのは、欲以上に大きく広がる安らぎ。ぐずる声にさえ、優しさを拾える。

「いや、俺も悪かったよ。
 誤解しても無理ねぇからさ。
 でもまぁ、気をつけてくれるか?
 多分、お前が一番警戒しなきゃならないのは、俺だ。」

「そんなこと・・・。」

「そんなことあるって。
 多分、他の誰よりも俺がお前の傍を独占して、お前を欲しいと思ってるんだから。」

それが真実だった。他の人間が新八に欲を向ける以上に長くそして強く、銀時自身が思っている。新八を欲しいと。そしてそれでも隣にいることを許されているのは、まさに新八の言葉が相応しい。


恋人だから、だ。


「銀さん。」

「何だ。」

身体を少し離し、見下ろしてくる新八の顔を見る。真上からの蛍光灯の灯りで薄い影の入った顔を、銀時はじっくりと見て、心に刻む。この顔も恋なのだと愛する。

「大好き。」


「俺も。」


銀時の頬に触れる唇は稚く、そして胸を掻くほど銀時の心を鮮やかにざわつかせた。






END

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あとがき
この話を考え付いて、こんな話っと簡単な設定を作ったときの最後の書置き。

”・・・・甘ったるすぎる。”


自分で書いてて、どうよっていうね。すんません甘いです。甘いですね。あぁ甘いさ。
ぶっちゃけシリアス書こうとした瞬間にこの話が思い浮かんで、泣きそうになったよ。もうね、何私の脳みそ。嫌いなの、私のこと嫌い?
まぁ、自分で書いてても、頭が煮えたぎりそうだったので、読んでいる人にっては、拷問に近いだろうな。渋めのお茶でお願いしますね。頑張れ。何で小説読んで苦行みたいになってんだよ。


シリアスシリアスと思ってたら、逆に”銀さんにメロメロの新八が、銀さんに怒られる話とかどうか?”と思ってしまったのが切欠。まぁなんとなく何でそうなったのかは・・・シリアスを見ると分かるかもしれない。真逆の話だから。それも完成できればの話だけど。
なので、新八が銀さんにメロメロです。(メロメロは死語だな、じゃあメロンメロンで)

基本新八好きーの自分としては、書きながらもちょっと腹立つな坂田と思わなくなかったんですが、まぁ今回は銀さん生殺し状態ですし、それはそれなりに楽しかったです。好きだからガッツリ一直線と言うのももちろん好きなんですけど、好きだからこそ心底大事にしたいからこそ、新八の全部を優先する坂田さんも、楽しかったです。紳士で真摯を意識しながら書いてたら、なんか・・・キャラが違いすぎて・・・面白い。いっそうの事、これってギャグなんじゃないだろうかと、書き上げてから思いました。

でも、こんな笑えないギャグもないか?

まぁ好きだの可愛いだの、愛しいだの愛してるだの、もうこれでもかと言うお砂糖ワードを盛り込みまくり、これはこれで楽しかったです。特に銀さんにべたべたに甘える新八と言うのも、想像してて大変かわいらしゅうございました。犬っころのごとく”銀さん銀さん”と目をキラキラさせながらじゃれ付いてくる新八の可愛さは、堪りません。そうだよな。そりゃ銀さんも辛いわって。ちょっと同情もした。
たまには、こういうなのも・・・と言うことでどうかお許しください。

今回は、タイトルは・・・そのまんまですね。銀さんの初恋番地かな?キスも何もかもが10代番地なんだけど、初恋だけは20代後半の番地。想像するとめっちゃ笑えました。
yuiさん / 2009/09/21(Mon) /
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